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 その1 【Visor子の憂鬱】
  その2 【ふたつの情事】
   その3 【Vx夫の雄叫び】
  その4 【昼下がりの給湯室】
   その5 【 泥沼 】
 その6 【Stampede】
  その7 【 錯綜 】
 mak21 SP 【Visor子の一日】
  その8 【 危機的状況下 】
   その9 【 白い胸騒ぎ 】
 その10 【出会いはトツゼン】
  その11 【 幸せのかたち 】
 その12 【ゆけむり殺人事件】

▽『Palmの世界』MeDoc



ますだあきら
Palm/Pilot Race



その1 【Visor子の憂鬱】

これまでのあらすじ:
ごく普通のOL Visor子は、満足した日々の中で、その幸せに単調さを見つけてしまったことから、
Vx夫という恋人がいながら、ついCLIE夫の魅力的なまなざしに眩んでしまい・・

 Cradle の上で CLIE夫は煙草を咥えていた。Visor子は気怠い満足感の中を漂っている。イケナイと思いながら、彼とこんな関係になってしまい、それからずいぶんと時が過ぎていた。

 さいきんよく考えるのは、恋人である Vx夫との決別だ。いまでも彼とは定期的に会っていてデータのやりとり (隠語) もしているが CLIE夫を知ってしまった今となってはもの足りなさを感じる。
 もう、あの新鮮な日々には絶対に戻れない、Visor子の躰がそう告げていた。

 シーツにくるまりながらそんなことを考えていると、
「そろそろ、終りにしようか」
 唐突に CLIE夫が云った。
「なによ、突然」
「まあ、そもそも始まりも終りも無い関係だけどな」
「そんな・・・ 私の気も知らないで・・」
「べつに、お前はアイツのところへ帰ればいいだけだろう?」
「も、もてあそんだのね、私のこと」
「お前も楽しんでたろ、そんなことを云われなきゃならない、スジアイじゃないね」
 Visor子は、口がきけなくなった。

 お互いの間に、しばし、沈黙が持たれる。CLIE夫がその煙草を灰皿へ押し付けながらポツリと云った。
「好きな女性(ヒト)ができたんだ」
「ダレ? まさか・・」そう、彼女には心当たりがあった。

 その時、ドアが勢いよく開いた。

「そのとおぉぉーり!」

 ずかずかと部屋に侵入してきたのは・・

「アンタは プ、Prism子!!」

(つづく)

予告:
突如現れた Prism子に翻弄される Visor子。失意のままに夜の街をさまよい・・ そして、見知らぬ WP と・・
その頃、彼女の浮気を知った Vx夫がしたこととは・・
そんな最中、あの男がついに登場する!

待て、次回っ!

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ますだあきら
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その2 【ふたつの情事】

これまでのあらすじ:
CLIE夫は、Visor子 に、今では倦怠感に満ちたこの関係を終らせようと、話を切り出す。
激昂する Visor子、そこへ当の Prism子が乱入して・・

「アンタは プ、Prism子!!」

「ふん、Visor子 あんたはもう用済みなのよ! 分からない?」

 絶句する Visor子、しかしその Prism子の姿を見て。
「・・あんた、なんて恰好してるの。なんなのよ、そのギラギラは」
 見れば、Prism子はまるでミラーボールの様な衣装に、なにやらミョウなカチューシャを付けていた。角がふたつ生えてる。
 それにはさすがの CLIE夫も、
「そ、そうだよ。ただでさえ、内輪ネタが多過ぎる、て苦情が・・」

「なによぉ、モンクある〜。姐さんのワルクチは許さないわよ」
 まあ、それはさておき。

「CLIE夫さん、こんなギンギラアホゥ娘が、私よりイイっていうの?!」
「・・所詮、カラーにはカラーがお似合いってことさ・・」CLIE夫はそう云うと、Prism子を抱き寄せた。

 それを見た Visor子は何も云わずにそのまま部屋を出た。

 夜のネオンの中でふらふらと足元がおぼつかない。

「よお、ネェちゃん、独りかい?」
 声をかけてきたのは、WorkPad らしき黒い姿。もうずいぶん酔っぱらっているらしき男だ。Visor子は誘われるままに、LH のハデな門をくぐってしまう。
そして、Cradle の上に押し倒されて・・

(ああ、こんな名前も知らないヒトとデータ交換 (隠語) してしまうなんて、ちゃんと防護フィルム付けてくれてるかしら・・ 私、このままオチていくの・・?)

「ちょっと待ったぁぁ! Visor子さん、そんなことイケナイ!」

 扉を蹴り倒して入ってきたのは。

「あ、あなたは!」

(つづく)

予告:
そのとき、Visor子の行為を止めるために現われたのは誰なのか・・
そして、Vx夫 は Platinum子から、自分の恋人と CLIE夫とのことを聞かされ。自暴自棄に陥ってしまう。
そんな中、やっとあの男が登場する!

待て、次回っ!

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その3 【Vx夫の雄叫び】

これまでのあらすじ:
Prism子の出現により、CLIE夫は彼女の元へ行ってしまった。
Visor子は夜の街をさまよい、行きずりの WP (オトコ) とホテルに入ってしまう。
しかし、それを止めに入った者がいた・・

「あ、あなたは!」

「Visor子さんっ!!」
「m100夫クン、どうしてここに・・」
「近くで見かけたから、声をかけようと思って、そうしたら、知らない人についていってしまったみたいだし。シンパイになって・・」
「あ、あなたには関係ないことでしょう」
「いいから出ましょう」強引に腕を引いて部屋を出ようとする、m100夫。

「おう、ニイちゃん、待てや」ナゼか関西弁。
 そこで、ちょっとした諍いとなった、しかし、腕力で WP が新機種に勝てるわけもなく (暴言) m100夫は半ば強制的に、Visor子の手を引いて外へ出た。

 次の日。
 ここは使われていない会議室のひとつ。

「それは本当なのカイ、Platinum子さんっ!」
「知らぬは当人だけってことね」Platinum子は、紫煙を吐き出した。
 Vx夫が聞かされたのは、CLIE夫と Visor子の関係だ。なんとなく、さいきん会っていても様子がおかしいのは感じていたが。

「そりゃ、名刺交換 (隠語) くらいはしてるかもしれないけど」
「名刺交換 (隠語) なんてもんじゃないわよ。同じ Cradle の上で、Beam トバしまくりのぐっちょんぐちょんよぉ (隠語です..)」
「ぐっちょん・・」
 絶句する Vx夫。

「じゃあね、そういうことだから、いちおう伝えたからね」そういうと彼女は部屋を出ていく。
 なんとなく云われっぱなしの Vx夫は、つい、
「ところで、Platinum子さん。キミが PalmIII 部長の愛人というのは本当かい?」
 一瞬凍りつく。
「・・・ほ、ほほほほー、なに云ってるの。そんなウワサ、信じちゃダメよぉ」と云いながら、扉を出ていくが、そのとき膝頭を思いっきりドアの端にブツける。
 閉めたドアを背に、膝を押さえてうずくまる Platinum子。

 ふ、これであと邪魔モノはあのハナモチならない、Prism子だけだわ。そうすれば CLIE夫さんはアタシのもの・・

「オシボリ、どうぞっ」
「や、どうもどうも、ささ、さっそく、名刺交換 (隠語) しよう」
「ヤダぁ、お客さんってば、せっかちー」
 その夜、Vx夫はキャバクラ『Upup』にいた。(いいのか?)

「キミ、カワイイね。なんて名?」
「Zaurus子です (源氏名 (C)ふふふ)」
「ちょっと、ぼくのタイプとは違うけど、やっぱりキレイな液晶だね」
「まー、おじょーずねぇ」
 しばらくそうしていたが、だんだん空しくなっていく自分を感じる。そうなったら、もうテンションも落ちてしまい、Vx夫は勘定を済ませると外に出た。
 いつの間にか雨になっていたが、かまわずその中を歩く。漏電するなよ。

 そして・・

「Visor子の、ばかぁー」
 夜の街に、Vx夫の叫びが響いた。

(つづく)

予告:
会社での昼下がり、Visor子の前に現われた者・・ そのシャープな匡体 (カラダ) を武器に、Visor子に迫ったのは・・
そして、失意の Vx夫はついに・・・
もう、登場するだろあの男!

待て、次回っ!

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その4 【昼下がりの給湯室】

これまでのあらすじ:
あやうく道を外しそうになった Visor子を止めたのは、彼女にそっと想いを寄せている m100夫であった。
そして、真実を報された Vx夫は自暴自棄に陥り夜の街を彷う。
雨の振り始めたネオン街に、彼の叫びが響いた。

 昼食を済ませた Visor子は、オフィスから少し離れたところにある給湯室にいた。カップに熱湯を注いで紅茶のティーバッグを浮かべる。

「やあ」
 突然、そこに現われたのは・・
「モノクリ夫さん・・」
「入って行くのが見えたんでね」モノクリ夫(ワル)はそう云う。

 Visor子は、半分無視するようにして、カップを手に給湯室を出ようとした。その腕をモノクリ夫(ワル) がつかむ。
「なんですか。なにか用?」
「ああ、そうだな・・ いろいろ、ウワサは聞いてるよ」
「なっ、アナタには関係ないでしょう!」
「そんなことはないサ。狙っていた席が空いたんだから」
「・・・そんなこと云って、アナタ Prism子だけじゃなくて、Platinum子にまでテを出してるらしいじゃないの」

「ははは、それこそ根も葉もないウワサってやつだよ。ボクにはそんな後ろ暗いところは無いよ」と嘯く(うそぶく)。
 そして、握っていた Visor子の腕を、さらに、ぎゅっとつかむ。
「所詮、カラーはカラー同士、ヨロシクやってるさ」CLIE夫たちのことを云っているらしい。
「ボクらはボクらで楽しまないかい?」
 必死であがらおうと、手を振り払おうとするが、いけないと思いながらも、つい彼女は彼のジョグダイアルに目を奪われてしまう。そして、CLIE夫との官能のイメージが蘇える。モノクリ夫(ワル) はそれを承知の上で、彼女の手をそっと自分のジョグダイアルに当てて・・
「ホラ、これがいいんだろう?」
「そ、そんなことない・・」と云いながらも、動けない Visor子。
 カップが床に落ち、砕けた。

「じゃぁ、今夜7時、居酒屋『掌極道』で待ってるから」そう云い残して、そこを出て行くモノクリ夫(ワル)。
 残された Visor子は剥がれされかけた保護シートを直しながら呆然とたたずむ。

 そのとき、廊下の隅で「これは使えるわ」とコブシを握り、二人の会話を聞いていた者がいた。
 それは・・・

(つづく)

予告:
二人の会話を立ち聞きしていたのは・・
Visor子は悩みながらもつい、待合わせの場所へと来てしまう。しかし、そこで予想外の場面に直面することとなる。
失意の Vx夫は何処へ行くのか?
そして、登場するのかっ、あの男は!

待て、次回っ!
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その5 【 泥沼 】

これまでのあらすじ:
会社の給湯室で、Visor子は モノクリ夫(ワル) に迫られる。
その妖しい魅力に翻弄される Visor子。
そして、モノクリ夫(ワル) は「夜、居酒屋『掌極道』で待ってる」そう云い残す。
しかしそこには、二人のやりとりを聞いていた影があった・・

 その夜、Visor子はネオン街に立っていた、目の前には居酒屋『掌極道』の看板。しばらくその前で迷った挙句に、その暖簾をくぐってしまう。

 地下へと続く階段を降りると、モノクリ夫(ワル) の姿を探す。
 しかし、そこにいたのは・・
「Vx夫さん、m100夫くん・・」
 手にしていたバッグは足元に落ちた。

 同じテーブルについていた二人は Visor子を見た。
「ここにキミが来るって聞いてね」Vx夫が云う。
「ぼくも、Visor子さんが待っているって云われて来ました」と m100夫。
 一体、どういうことなのか、彼女はパニックに陥る。
「やあ、お待たせ」タイミング悪く、そこに モノクリ夫(ワル) が登場する。
「あれ、みなさんお揃いで、ナニかあるんですか」
 悪びれもせずにモノクリ夫(ワル) はそう云う。さらに、
「今夜は、ボクと Visor子ちゃんとの 初めての (甘い夜) なんですから、飲むならアチラの方でお願いしますよ」と離れた席を指差した。

「どういうことなんだ、Visor子さん。キミは CLIE夫だけではモノ足りないというのか」
 Vx夫は云う。
「どうしてそのことを・・」Visor子は絶句。
「えっ、ぼくはてっきり Vx夫さんとつき合っているものと思って、諦めていたのに・・」 m100夫は呟く。
 そんな中でも、モノクリ夫(ワル) はニヤけて彼らのやりとりを眺めているだけだ。

「そんなにジョグダイアルがいいのか!」

 いたたまれなくなった Visor子は店を飛び出した。
 行く宛てもなく、ネオンに照らされた道を歩いていたら、

「たいへんだったみたいね」

 声がした。
「あ、あなたなのね、あの二人に今夜のことを教えたのは!」
 路地の隙間から現われたのは、Prism子だった。
「どうして! 私に何か恨みでもあるの?」
 Visor子から CLIE夫を奪うだけでは済まさず、なぜ、こんな仕打ちをするのか?どうしても理解できない。
 あいかわらず派手目な恰好で煙草を咥えていた彼女は、それをヒールの踵で潰しながら答えた。

「いずれ、分かるわ」それだけ云うと、彼女を残して、夜の街の中へ去った。
 残された Visor子はその場に立ちつくす・・

(つづく)

予告:
悪意があるとしか思えない、Prism子の仕打ちの意味とは?
Visor子に、いま、特定の人がいない状態であると知った m100夫がついに行動を開始する。
そして、あいかわらず失意の中の Vx夫。彼女のことを忘れようと今回訪れたのは・・・
いいかげん登場しろよ、あの男!

待て、次回っ!

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ますだあきら
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その6 【Stampede】

これまでのあらすじ:
モノクリ夫の誘いに、つい、待ち合わせ場所に来てしまった、Visor子。
しかし、そこに展開されたのは言葉のとおり『修羅場』であった。
彼女を巡る3人の男が鉢合わせしてしまったのだ。その場にいられなくなった Visor子は夜の街を彷う。
そして、Prism子の奸計によって、それがされたのだと彼女自身の口から聞かされることになる。

 会議が終った。
 その日はとても重要な内容のものだったのだが、Visor子は「心ここにあらず」で、ずっと他のことを思っていた。たまに対角に座っている m100夫の視線に気がついたが、目を合わせることはできない。
 上司たちが先に退出し、Visor子はホワイトボードに書かれていた文字を消すと、資料を持って会議室を出ようとした。
 腕をつかまれる。
「なに?」彼女をその場に留めたのは m100夫だ。
「ちょっと、話があります」
「私は無いわ」
 しかし、m100夫はその手を離さない。
「なんなのよ、一体」
「あなたが、Vx夫さんとの関係が無くなったと分かった以上は・・」
「どうだっていうの?」
「ボクも黙っているワケには行きません」m100夫はそこまで云うと移動して、後ろ手に部屋の鍵を掛けた。
「・・なにが云いたいわけ?」

「確かにアナタから見れば、ボクは何もできないオトコ(Palm) に見えるかもしれないけど」
「そんなこと・・」
「Vx夫さんに安心して任せられないと分かった今となっては、アナタを幸せにできるのはボクしかいません!」
 そう、鬼気迫る表情でつめ寄る m100夫。
「じゃあ、一体なにができるっていうの?」ついそう訊いてしまう、Visor子。
 m100夫はくるりと後ろを向くと、ゴソゴソとなにやら取り出して・・
「ホラ」振り返る。
「・・・フェイスプレートを変えたのね」
「はい、アナタの好みの男にしてください」
「・・それだけ?」
 室内を、冷たい風が吹き抜けた。

 その夜、Vx夫は、某ファッション系マッサージ店に居た。

【 お詫び 】
〜 非常に、きわどい描写となるため、申し訳ありませんが ここからは音声のみでお送りします 〜

「お客さん、ココ初めてよねぇ」
「ん? ああ」
「どうもっ、指名番号 MIのE1子ですぅ。よろしくネッ」
「なんか、覚え難いナンバーだなぁ」

「うふ、○○とか、△△とか、あまつさえ、□□を××なんてこともトクイよ〜」
「ふん、そんなこと、たかが PDA のクセにできるワケないだろ」
「ふふふ、それはどうかしラ、行くワヨ」

 (シャキーンッ!)

「な、なんだよ、今の音? あ、ああ、さっきと形態がチガウじゃないかっ、キミぃ」
「ほうら、ほうら」
「ああ、ああ、なんてことだー」
「どう?どう?どう?」
「お、おうっ! パ、パ、パラダイムシフトぉーー!!」

 いいのか?

(つづく)

予告:
Visor子は悩んでいた。一体これからどうすればいいの?
そんな彼女の前に、今度現われたのは・・・
そして、CLIE夫と、Prism子の間にも奇妙に不穏な空気が流れていた。
今世紀、Visor子は幸せを手にすることができるのか?
っていうか、新世紀の最初に書いたのがコレか、オマエわっ!

待て、次回っ!

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ますだあきら
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その7 【 錯綜 】

これまでのあらすじ:
思い込みと、方向性の違うであろう責任感で、ついに m100夫が動いた。
しかし彼の、(自分では) 強烈なアッピールは、カラ振りに終ったのだった・・
そのころ、Vx夫は怪し気な洗礼を受けている。
(シャキーンッ!)

「アンタ、ナニ考えてんの?」
「別に何も、と云ったら、まあ、語弊があるのかな」

 ここは会社の休憩所。
 立ち話の二人の影が、廊下に伸びている。もう陽が落ちそうな頃だ。
「ただの『女たらし』て思っていたけど、なんか違うみたいだし」
「違わないサ」モノクリ夫(ワル) は、そう答える。
「ただ、どの女のコにだって、それぞれの魅力があるわけだし、ボクはただ、そのそれぞれを味わってみないと、決められないタチなだけだよ」
「決める、って何を?」Platinum子のその問いに、彼は答えない。
「Visor子は、その (トクベツ) ってワケ?」
「さあね・・」
 モノクリ夫は飲み終った紙コップを握りつぶすと、少し離れたところにあるゴミ篭に投げこんだ。

「Visor子くん、ちょっといいかね」
 急に名前を呼ばれたので、ちょっとびっくりした彼女は、椅子を回してそちらを見た。
「PalmIII部長。なんでしょう」
「ああ、ちょっとお願いしたいことがあるのだが、いいかね」
「はあ、」
「こっちに来てくれるかな、」そう云って、部長は先に立って歩き始める。
 彼女が従うことはあたり前のことだ、とでもいうように、振り返りもしない。Visor子は慌てて立ち上がると、彼の後ろ姿を追った。
 あまり縁の無い部門の資料室へと連れてこられる。中はカビの匂いが充満していて、息がつまりそうだ。Visor子は、窓際まで行ってそれを開け放とうとクレセント錠に指を掛ける。
 そのとき背後で、入り口のドアの鍵が閉じられた。
「部長?」

 さて、所は変わって、ここはとある場所の一室。

 コトが終って、ベッドの上で煙草に火を点ける Prism子。CLIE夫も同じように煙草を咥えた。
 そして、唐突に彼女の口が動く。
「ねぇ、もう二人で会うのヤメよ」
 思わず、CLIE夫は煙草を取り落とした。慌てて、シーツの上に転がったそれを拾い、灰をはたく。
「なんだい、いきなりっ」
「アタシは、いきなりじゃなかったの。今日はそれを云うために来たんだから」
「お、おれはキミのために、Visor子と別れたんだぞ!」
「莫迦ね」
 Prism子は、口の端で笑うようにして云う。

「それが目的だったんじゃない」

(つづく)

予告:
Visor子の危機的状況に、救いの手はあるのか?
そして、モノクリ夫(ワル) は何を考えて、なにを行なうのか。
また、Prism子の真意は? そのころ、お気楽二人組は・・
で、けっきょく、「あの男」てダレだったんだ!

待て、次回っ!

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ますだあきら
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mak21 SP 【Visor子の一日】

これまでのあらすじ:
毎日を楽しく過ごしていた、普通のOL Visor子。しかし、それが少しずつ崩れていくのをその身を持って体験することになる。
様々な人々(Palm) との関係の中で、男と女の感情が交錯する(でもPalm)、暴走と錯綜の Beam叙事詩 (Palmなのに・・・)
Visor子は自分の幸せをつかむため、そして夢見る明日のために、今日も元気に出勤するのだが・・・

07:35 [朝]
 Visor子は目覚めると、就寝にいつも使っているケースから出た。
 とりあえず液晶のホコリを払い、防護シートに瑕が無いかを確かめる。身だしなみはオンナの特権 (はーと)
 そして、電池の Volt をチェックしたあと、朝の HotSync!。

08:30 [出勤]
 電車の中で今日のスケジュールをチェック。今夜は親友の TRGPro子(初登場) と夕食の予定が入っている。
 乗っていた車両は途中から混んできて、アヤしいカタチの Palm に、電池ボックスの中まで手を入れられそうになる・・ が、なんとか死守。

09:15 [会社到着]
 着いてみると机の上に書類が山積みになっていた。きっと、PalmIII部長が先日のハラいせに仕事をいっぱい回しているに違いない。ちょっとブルーになりながらも、仕事を開始するしかない。
 そうしているウチに、PalmIII部長が「間違えて置いてしまった」と云って、書類を引きとりにきた。キホン的に気が弱い人なのだ。

12:00 [昼食]
 少しだけ会社から離れたところにある、オープンカフェでサンドウィッチとコーヒーを注文する。持参していた雑誌を見ながらそれらを口にしていたら。
「いい気なものね」いつの間にか、同じテーブルに Platinum子がいた。
「アナタ、いま自分がどういう立場にいるのか分かっているの?」
 もちろん、何のことやら分からない、と答えると、彼女は怒ったようにテーブルを (バンッ) と叩いて行ってしまった。

13:30 [会議]
 Beam が飛び交った会議も終り。あと片付けをしていたら、
「だから、あなたにはボクが必要なんだー」
 例によって、m100夫にセマられる。最初の頃は嬉しかったものだが、さいきんはちょっと煩くなってきた。
「Vx夫さんは、もうあなたの元には戻ってきませんよ」
 最後のナゾの言葉が気にかかる。

17:30 [帰宅]
 ロビーで待ち合わせていたので、そこで TRGPro子の到着を待っていると。
「あら、早いわねぇ」Prism子だった。相変わらず、ハデな液晶である。
「CLIE夫は、あなたの元に帰りたがっているみたいだけど、どうする?」急にそんなことを云われても分からない。そもそも、CLIE夫とはなんでもないんだし、そう答えると。彼女は、なぜか満足したような顔をして、灰皿に煙草を押しつける。そのままエレベータに向かって行ってしまう。後ろ姿にオンナが漂っている。入れ違いに TRGPro子が下りてきた。
 しかし Prism子は、どうもここで、自分を待っていたような気がしてならない。

19:10 [夕食]
 イタリアンレストラン『くりすたる』にて、とりあえず、ワイングラスを合わせる。
「やあ、奇遇だネ」CLIE夫がいた。
「いやいや、モチロン ジョグダイアルは健在だよ」こんなところで何を云いだすのやら。
 どうやら、Prism子とは本当にうまく行っていないらしい。

21:55 [Bar]
 モノクリ夫(ワル) と遭遇、TRGPro子にセマらんとする彼をケちらし、二人でショットバーに入ってココロの充電をする。
 しばらくそうして、カウンターで話をしていたら。
「わたし、整形しようと思っているの」突然そう云われたときには驚いた。どうやら dave design のケースに換えようとしているらしい。
「高いケド、もう昔のわたしとはサヨナラしたいの」と云われれば返す言葉もない。

23:45 [帰宅]
 TRGPro子とは、途中で別れた、Visor子は駅の方向へ向おうと足を進める。
 Vx夫がいた。
 なにやら複雑な名前の、とても口にはできない言葉が書かれているケバケバしい看板の並んでいる通りだ。
「や、やぁ、Visor子。久しぶりだね」聞けば、近くの居酒屋で友達と待ち合わせているとのこと。一緒に行ってもいいか と訊くと、慌ててブンブンと手を振り回しながら、
「いや、いや、キミは知らない人ばかりだし、ちょっと危険だなぁ、キミみたいな可愛いいコを連れていったら」そう云って、ワザとらしく声を上げて笑う。
 キワめて怪しいと思ったが、そのまま彼とは別れた。

24:10 [就寝]
 夜の HotSync! をしてから、床に就く。寝付きは良いほうだ。
「わはーはっはっはー!」
「はーはっはっはっ!」
 モノクリ夫(ワル) と、CLIE夫が二人、裸で現われた。(そりゃそーだ)
 まさに悪夢の様相ながら。悶絶する Visor子の顔はいつしか恍惚の表情へと変っていった・・
 夜はまだ長い。

予告:
ではまた、本篇をお楽しみに :-)

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その8 【 危機的状況下 】

これまでのあらすじ:
PalmIII部長の手で鍵が閉められた。この密室に Visor子とふたり、部長の思惑とはやはり・・・
突然の別れ話に混乱する CLIE夫。
「それが目的だったんじゃない」 Prism子の謎の言葉が意味するのは、一体なにか?
そして、モノクリ夫(ワル)もまた、謎の言葉を吐く。

「あの・・・ 閉め切ったら体に悪いんじゃないでしょうか」
 厭な予感を胸に抱きながら Visor子はそう云う、返事は無い。
 ドアに鍵を掛けた PalmIII部長がゆっくりと振り返る。その目はアヤしく光っていた。
「ふっふっふ、実は、キミとはねんごろな関係を期待しておったのだよ」

 そう云うなり、窓際に立っていた Visor子にセマってきた。
 ニクタイ的危機を感じた彼女は倉庫の奥へ向かって走り出す。しかし、それは間違いだとすぐに気付く。この倉庫、奥の方へ行けば行くほど狭く、また暗くなっていくのだ。
「逃げることはないだろう、悪いようにはしないから・・」
 そう云う部長の顔は醜く歪んでいる。そして、血走った目を彼女に向けて近づいてくる。
 Visor子はどうすることもできず、ホコリが溜った床の上に点々と足跡を付けて、書棚の間を逃げる。

 大きなダンボールの影に身をひそめた。このままジッとしていて、部長が通り過ぎてしまったら、急いで出口に向かおう。この薄暗い場所であれば、きっと見つからないはずだ。そう頭の中で考える。
「いいトシをして『かくれんぼ』かい?そんなコトより、もっと楽しいことをしようじゃないか」
 ゆっくり、声と足音が近づいてきた。
 すぐそこまで来ているのが、部長の荒い息遣いで分かる。彼女は、息を殺して全身の動きを極限まで止めようと務めた。ぎゅっと目を閉じる。

 少しずつだが、彼の呼吸音が遠くなっていくのが聞こえる。そのまましばしの間、同じようにジッとしていた。そして、やっと安堵の溜め息を吐き出した。しかし、
「ここかぁ!!」
 目の前のダンボールが突然取り去られる。目の前には邪悪な面相の部長がいる。持っていた懐中電灯で足跡を追っていたので、始めからバレていたらしい。そういう彼女を見て楽しんでいるのだ。
「さぁ、捕まえるぞぉ」まるで、子供の遊びをしているような様相で、両腕を上に伸ばして彼女の体に触れようとした。

 Visor子は立ち上がると、その片腕を取り部長の後ろへ素早く回り込んだ。そして、強引にワキ固めの要領で、いっぱいのホコリの上に彼を組み伏せる。そのまま冷静に『リセットピン』を取り出すと、背中の (穴) へ差し込む。
 きっと、PalmIII部長は何が起ったのか理解できなかったに違いない。

 再起動のために動かなくなってしまった部長をそのままにして、出口に向かって歩き始める Visor子「こうなるからイヤだったのに」

「はああ・・ クビかなぁ・・・」
 彼女は呟くと、大きな溜め息をつく。そうして倉庫の鍵を開けて外へ出て行った。

(つづく)

予告:
幸い、Visor子の心配は、まったくの徒労であった。
久しぶりに Vx夫 からの誘いを受けて、喜ぶ Visor子。
しかし、そんな中、親友の TRGPro子からとある相談を持ちかけられる。そして、とても驚愕することになる、その内容とは・・
また、失意の m100夫はどこへ行くのか?
そして、あの男がついに・・ (もうイイって)

待て、次回っ!

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その9 【 白い胸騒ぎ 】

これまでのあらすじ:
PalmIII部長の魔手から逃がれた Visor子。さいわい、これといったお咎めもなかった。
倦怠に満ちているいつもの業務をこなしていきながら、いつしか日常に戻ったかと思えたのだが・・
それは唐突に訪れる。

「Visor子くん、異動だ」
「はい?」

 その日の朝、突然部長から呼び出しを受ける。小会議室で一人待っていた PalmIII部長は渋面であった。そう装っていただけかもしれないが。
 以前のことがあったので、ドアは少しだけ開けておく。椅子に腰掛けると、すぐに目の前に一枚の紙が差し出されたのだ。
「・・突然ですね」
「ああ、そうだな」
「どうしてまた、イキナリ・・」
「なんでも、新しい部門が作られたらしくてな、人を集めてるらしい」
 けっきょく、この前のコトを根に持たれて、そういう話があったときに名前を挙げられたのだろうか? と邪推してしまうのは仕方がない。
「そこの新しい部長が、キミを是非欲しいと云ってきたのだよ」
「誰なんですか、その新部長って」
 まあ、行ってみれば分かるだろう、じゃ、席の移動とか、引き継ぎとか、頼んだよ。と云い残すとサッサと退出していってしまった。

 数日後、Visor子は新しいオフィスへと出勤する。
 これまでのデスクとくらべて、すべてが素晴しい環境へと変わっていた。嬉しいながらも一体どんな仕事が待っているのかと不安になってくる。
 事務の女性が彼女に声をかけた。さきほどから気になっていたのだが、やはり窓際にあるパーティションで区切られた向う側が、新任の部長、すなわち Visor子の新しい上司が陣取っている場所であるらしい。
「失礼します」パーティションの入り口らしい辺りで内部に向かって云うと、どうぞと返ってきた。足を踏み入れると、窓の外を見ている男の背中があった・・

「あ、あなたは、その若さでいきなり部長代理に抜擢され、その上、容姿と高学歴から女性の間でもっぱらの話題。その実、社長のご子息ではないかという噂もある しろクリ夫さんっ!!」
「ふふふっ、非常に説明的なご紹介をありがとう、Visor子さん。どうも、新任のしろクリ夫です」
「ど、どうして私のことを・・?」
「そういうあなただって、ボクのことをよく知ってらっしゃるようだ」
「それは・・・」
 いつしか しろクリ夫は窓からは離れ、Visor子の目の前まで来ていた。
「ナゼ、オトコたちがあなたに夢中になるのか?そのワケが知りたいと思いましてね」
「そ、そんな理由で私を呼び入れたのですか?」
 まさかと云うが、その手が彼女の手をスッと握った。思わず小さな声を上げる・・

「ちょっと待ったぁ!」
 バタンっ (ドアは無いので、あくまで効果音である)
「ア、アンタは! Prism子っ!」

 デジャブにアラズ・・・

(つづく)

予告:
いつかの様にまた、Visor子のいる領域に侵入してきた Prism子。彼女はナゼ・・
しろクリ夫の真意が分からぬまま、新しい環境での生活が始まる。
にわかに慌しくなったそのさ中、Visor子には、もうひとつの出会いが待っていた。
そして、ついに明かされるかもしれないあの男の正体とは・・

待て、次回っ!

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ますだあきら
Palm/Pilot Race



その10 【 出会いはトツゼン 】

これまでのあらすじ:
突然の異動でガラリと環境が変わった Visor子。不安の中での新しい出会い。
そこに待っていたのは社内では噂に高い、しろクリ夫であった。
そして、不意に現われて Prism子が云ったのは・・

「アナタ!また現われたわね。一体なんだって云うの?」Visor子は叫ぶように云う。
「ふん、人をバイキンみたいに云わないでよ。ただ、アタシも隣の部署に越して来たから挨拶に来ただけじゃない」
「隣の部署?」「そう、ベツにアンタが特別だなんて思って欲しくないわぁ」
 そんなこと思ってない、と Visor子が答えると。
「じゃ、またヨロシクねー」とワケありげにしろクリ夫に視線を投げかけて、その場を立ち去った。
 いつものごとく、嵐のように辺りを掻き回して行ってしまった彼女の後ろ姿を見て、
「ハナシには聞いていたけど、いつもあんな感じなのかい? 彼女は」
「はあ、まぁ、あんなものです・・」
 ニヤリとしろクリ夫は笑う。その笑みが何を意味しているのか Visor子には理解できなかったが。

 やっと、自分のデスク周りの環境を整え終り、一息つこうと休憩室を探した。
 方向はなんとなく聞いていたのでそちらに向かったのだが。なんとなくまた、Prism子に会うような予感がして。なんとなく周りに気を配りながら慎重にそちらに歩いて行く。
「おっと!」
「ああ!」
 変に周りを見渡しながら廊下を歩いていたため、前方に注意が向いていなかった。曲り角で紙コップを持った男性と衝突してしまう。白い床の上にコーヒーらしき液体が拡がった。
「ごめんなさい!」慌てて落ちた紙コップを拾い上げる Visor子。もちろん、すでに中はカラだった。
「すみませんでした、本当に、」そう云って、初めて相手の顔を見た。
「いや、ぼくもヨソ見しながら歩いてたから。申し分けない」
 精悍で誠実そうな男性だ。
 シャープな体のライン。
 幸い近くに給湯室があったので、雑巾を見つけ床を拭いた。いいです、と断わったのだがその彼も一緒にきれいにしてくれる。
「それより、濡れなかったかい?」拭き終って、彼がまずそう云う。彼女の足元に目をやる彼。その視線に、つい顔が火照ってしまう。
 もう一度、謝りの言葉を口にして、給湯室を出ようとしたのだが。Visor子は、振り向いて訊いてみた。

「すみません、あの・・ お名前は?」
「m505夫です。ヨロシク Visor子サン」

(つづく)

予告:
久しぶりのトキメキ。
m505夫(えむ・ごーまるごぉ) からの誘いを快諾した Visor子は、二人の時間を楽しみながらも、急に訪ずれた幸せにとまどいも覚える。
そんな中、不穏な話を耳にするのだが・・ それは・・
ん〜 あの男のことは、とりあえず忘れない?

待て、次回っ!

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その11 【 幸せのかたち 】

これまでのあらすじ:
異動のその日、Visor子は二人の男性に出会う。少し得体の知れない部分がある上司のしろクリ夫、そして極めてサワヤカな m505夫(えむ・ごーまるごぉ) 。
彼女は m505夫のその精悍な容姿に、つい心を奪われ・・・

 馴れない環境の中やっと自分の居場所を見つけられるようになった Visor子。すぐに仲良くなった Edge子と二人、今日は会社近くのレストランで昼食を摂った。
 その時のこと、
「ねぇ、」「ん?」
「m505夫さんのこと・・」
「え、知ってた?ダレに聞いたの」フォークに巻きつけたパスタを突き出しながら云う。
「まあね、聞き耳立ててる人はいっぱいいるからね、あの辺り」
「そうなんだ」あまりそんな雰囲気は感じていなかったのだが。
 付き合ってる、という明確な気持はまだ無いが、お互いに誘い合って、夕食を一緒にしたり、休みの日にも数回会っている。
「うん、ただちょっと気をつけた方がいいかなぁって」
「何を?」
 明解な言葉は返ってこなかった。うやむやな形にされたまま、その席を立つ。
 Edge子はというと、その外観はスレンダーでシャープ、派手ではないのだけれど洗練された印象。姿のままのサッパリした性格で、言動にもストレートな表現が多い。
 その彼女が曖昧な気持を伝えたがっているらしい、それは m505夫との関係のことなのか、m505夫自身のことなのか、周りとの関係の話なのかその場では分からなかった。

 その夜も、m505夫と近くの喫茶店で待ち合わせてディナーを一緒に過ごした。
「社員旅行があるじゃない」彼が云う。
「うん、また温泉でしょう?」
「そうそう、『マグマ温泉』。タマには他の所にしてくれないかなぁ」
 さて、ついワインが美味しくて、かなり大胆な言葉を使っている自分にハタと気付いた Visor子。うーん、飲み過ぎちゃったかな、と彼女が思ったとき・・
 スッ と、彼の手が Visor子の左手に置かれた。
「ねぇ」それだけしか云わなかったのだが、彼女はすぐに m505夫の云いたいことが理解できた。

 誘われるまま Beam で絡みあってしまった二人、簡単には後に引けない関係。
 もちろん、Visor子に後悔はなかった。
「やっぱりダメ・・・」しばらくベッドの上、考え込むような顔をしていた Visor子が突然云う。
「なんだよ急に。後悔してるのか?」
「ううん、そうじゃなくって、どう考えても旅行になんて行けないと思う」新しい業務をまだ理解している段階なので、目を通しておかなければならない資料が山積している。それを理解した上での自分の業務方針を作成しなければならず、その締切が旅行の時期と重なっているのである。
「なんかワザとらしいカンジもあるけど」「どうしてそんなことする必要があるの?」
「さあ・・、そういや部長代理も行けないって云ってたから・・」そう言葉にしてから、ジッ と Visor子を見た。
「なんかスゴク心配になってきた・・」
「・・バカ」

(つづく)

予告:
Visor子のいない社員旅行。そこではとんでもないことが出来していた。
一体これからどうなるのか、誰にも予想できない自体に翻弄される人々。
ちなみに「書き手もヨソウできていません」
そういや、『あの男』って m505夫だったような気がしないでもない・・

待て、次回っ!

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その12 【 ゆけむり殺人事件 】

これまでのあらすじ:
m505夫とのスイートなひととき。
様々な面で満たされ、Visor子は幸せをかみしめた。
しかし、社員旅行はけっきょく (留守番) ということになってしまう。そこは割り切ってm505夫ら社員を温泉へと送り出したのだが・・

「すると、あなたは・・」
 沈黙に我慢ができなくなった者が呟くように云う。

「そう、このように考えればあの人のアリバイはまったく意味が無くなってしまう」
「つ、つまり・・・」
「みなさんが怪しいと思った人が、実のところ、そのまま犯人だったんですよ。アリバイ工作に翻弄されてしまいましたがね」

 だがしかし、2番目の殺人についての立証がまったくされていない。そこが指摘された。
「そうだそうだ、2番目の事件こそ『謎』じゃないか。あの時間、被害者の彼女以外は間違いなく宴会場にいたぞ」
 それに同調する声は大きかったのだが。
「いや、それは皆さんが見落としていることがあるのです。きっとその件については、一連の連続殺人とは無関係ですよ」
「どういう意味だね、それは」
「そのままの意味ですよ、2番目の彼女はほとんど自殺に近いです」
「おいおいそれは聞き捨てならんぞ」
「2番目の殺人が発覚した時間にズレが生じたために、つい連続殺人であるという意識を全員が持ってしまった、そう・・・」探偵役はそう云うと、周りの人々を見回した。そして、
「どこでしたか。彼女が発見されたのは!」
「ろ、露天風呂ですじゃ!!」タンテイの声に釣られ、従業員の Pilot1000 が大声を出した。
「・・風呂場か、まさか」
「そのまさかでしょう、きっと彼女は」

 入浴したのだ・・

「・・・ショート」
 死因は感電死だった。Palm が入浴できるワケはない・・ じゃあ、アンタらは温泉場になにしに来たんだ? という話である。

 さて、この事件の詳細に関しては番外篇という形を以って、別途公表できるときをお待ちいただきたい。
 本編と関係する部分はほんの一部であるからして・・ って、それが大変なコトなんだけど。

 その頃、社員旅行に参加できず、会社で独り業務に励んでいた Visor子は、なんとなくイヤな胸騒ぎを覚えていた・・

(ガシャーン)
 デスクの上にあったコーヒーカップが、触ってもいないのに床へ落下。
 砕け散る音が静かなオフィスに響いた。

(つづく)

予告:
Visor子が受けた電話は、彼らの旅行先からのものであった。
驚愕の事実を突きつけられる Visor子。その内容とは・・・
そして、社員旅行から帰ってくる人々。しかし、もうこれまでの生活は取り戻せないのか。
イヤもう、結構です、『あの男』!

待て、次回っ!

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