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2005.6.2
連続小説 「GAMER 〜NAS芹沢物語〜」 (NAS芹沢@大阪PalmIII)私の名は「なる」。 あ、いや、現在の名は「NAS芹沢」(なす・せりざわ)。 それは、私がゲーマーだった頃。 遠い昔のお話・・・。 第19回「これが平賀流だ! なる、史上最大の危機」 1面クリアしたとき、なるは左隣にいる平賀正義を見た。 挑戦状を叩きつけてきた割には、そんなに恐そうな人物ではない。 しかも、なるが見た平賀正義の横顔はどこか楽しそうでもあった。 なるは、ますます平賀正義のことがわからなくなるのだった。 なる:(この勝負に決着が着いたとき、すべてが明らかになるような気がする) なるはゲームに集中することだけを考えることにした。 あかね:こら、なる、気合入れなさいよ! 平賀正義を気にして落ち着かないように見えるなるの様子を見たあかねは、いつものようになるに気合を注入した。 2面も、互角の展開を見せた。 両者とも全く危なげなくクリアしていく。 しかし、途中のボーナス点の取り方に微妙な差が出て、平賀正義のスコアが数百点ほどなるを上回った。 平賀:NAS君、さすがだ。 なる:ありがとうございます。 あかね:なる、いちいち答えちゃダメよ。こいつ、絶対怪しんだから。 口から出任せのようなあかねの一言であったが、このあかねの「勘」はまたもや的中していたことが後でわかることになるのだった。 平賀:やはり、君を倒すには並の技では無理なようだ。そろそろ本気を・・・出していくぞ、NAS君。 平賀正義のその一言に、なるもあかねも身が引き締まる思いだった。 あかね:あれほど完璧なプレイをしているのに、まだ何かしようっていうの、こいつ。 なる:(くる。平賀正義の本当の力を示す、何かが・・・何だ?) 平賀正義は気合を入れるような叫び声をあげた。 平賀:はああああああーーーーーーーーっ! そして全身に力を込めるように体を震わせながら、目を閉じた。 あかね:ゲームの最中に、目を閉じるなんて! あかねはあっけにとられた。 さらに平賀正義の叫びは続く。 平賀:おおおーーーーーりゃあああああああああーーーーっ!! まるで格闘家が何十枚もの瓦を割るときのような、ものすごい気合の入った叫び声とともに、平賀正義は両手を自分の胸の前で合わせとかとおもうと、即座になるの座っている右側方向に向けて、攻撃でもするかのように両手を突き出した。 あかね:何?何なのこれ? まるで部屋全体が揺れるような衝撃が、一瞬突き抜けたように思えた。 屋内なのに、なぜか風が吹いているような感覚だった。 なる:うっ・・・・・。 なるの声を聞いたあかねは、なるの方を見た。 なんと、レバーを握りしめているなるの左手の甲に、軽くナイフで切られたような3cmくらいの鋭い傷が横一文字に二本ついていた。 あかね:ま、まさか!? あかねは平賀正義の方を見た。 平賀正義は肩で息をしていたが、目はもう開けており普通にゲームをプレイしていた。 なるの左手の甲の傷の端から、血が流れ落ちる。 なる:ううっ・・・・・・・・・。 辛そうにしてはいたが、なるはゲームに関してはいつものように平静にプレイしていた。しかしながら、レバーを操る手は痛そうだった。 なる:平賀正義の秘密とは、相手の・・・プレイヤー自身を攻撃できることだったのか・・・・ううっ。 あかね:これが、平賀正義の正体ね!とんでもない奴だわ! なる:あかね、もう少し後ろに下がってるんだ。 あかね:私はなるを応援するわ。一歩も引かないわ。こんな奴になるが負けるもんですか! なる:あかね、危ないぞっ。 あかねは平賀正義の方を見たまま動かない。 平賀正義はいつのまにか楽しそうな笑顔が消え、真剣な表情になっていた。 あかね:なるには一切触れずに攻撃している以上、確かにこれは反則ではないかもしれない。でもあれは一体何なの?武器を持ってるわけではないし、どうやってなるを傷つけているの? なると平賀正義は、その後も勝負を続けている。 すでに3面の中盤に突入していた。 あかね:平賀正義は肩で息をしている。ということは、あの技は連発はできなさそうね。しかも、2面が終わって3面が始まるまでの間、つまりゲーム中の操作が不要な時に攻撃してきた。 あかねはなるの左手の甲を見て、傷を気にしながらつぶやいた。 あかね:つまり、目をつぶって意識を集中させなければ出せない技であれば、自分の手が忙しい間は相手に攻撃できないということだわ。 そこまでつぶやくと、あかねはもう一度平賀正義を凝視した。 あかね:ということは、もし次に同じ技で攻撃してくるとすれば、3面をクリアしたとき・・・。 平賀:ふう、さすがだNAS君。よく耐えた。だが・・・いつまで持つかな。 なる:・・・。 二人はともに3面を終了。 スコアは依然として、平賀正義がほんの少しリード。 なるもほぼいつも通りの実力を発揮していて、やはり互角であった。 あかね:くる・・・今度もあの技がくるっ。 平賀正義は謎の技のモーションに入った。 平賀:はああああああーーーーーーーーっ! あかね:なる、危ないっ! 平賀:おおおーーーーーりゃあああああああああーーーーっ!! 平賀正義がなるに向かって技を発した、その時だった。 なる:とうっ! なるは素早く立ち上がると、自らが座っていたゲーセンの椅子の上に右足を乗せ、椅子を踏み台にして真上にジャンプした。 平賀:なにっ!? あかね:なるっ! 着地したなるは、また椅子に座りなおしてスタンバイした。 なるのゲーム筐体は、平賀正義の攻撃を受けて大きく揺れたが、なるはそれを上方に逃げることでかわしたのだった。 あかね:攻撃を、よ、避けた! 平賀:NAS君、私は君を甘く見すぎていたようだ。さすがだ。 なる:勝負はこれからだぜ、平賀正義っ! 4面も難なくクリアされ、勝負は5面に突入していた。 どちらも一歩も引かない展開が続く。 しかし、なるは手の甲を気にしながらのプレイでいつもより集中力を欠いていた。 スコアはいまだに平賀正義が数千点上回っている。 あかね:なるが勝つには、どうすればいいの? なる:(絶対に勝機はある。待つ、待つんだ・・・今は我慢だ・・・) 平賀正義は攻撃をあきらめたのか、5面、6面が始まる前では何もしてこなかった。 なるは落ち着いてプレーしていた。 平賀正義はやや疲れた表情をしている。 あかね:やはり、あの技は多用はできないみたいね。奴は相当疲れてるわ。なる、今がチャンスよ! 平賀:ふふ、やはり君と戦うときは、こういう状況になると思っていたよ、NAS君。 平賀正義はカウボーイハットのずれを右手で直し、その後あらためて背筋を伸ばすと、激しくレバーを動かしながら、なるに語りかけた。 平賀:やはり、君に勝つには奥義を出すしかないか。 あかね:奥義ですって! なる:うう・・・まだ、まだ他にも技があるのか・・・。 平賀:その通り。そして私が勝利する。 あかね:そこまでして、どうしてなるに勝とうとするの?何のために? あかねの問いに、平賀正義は何も答えなかった。 平賀:平賀流奥義、今こそ受けてもらおう!! 少しずつ明らかになる、平賀正義の秘密。 攻撃は最大の防御ということなのか? これまでにない苦戦が続く、なる。 勝負は最終面、7面に突入しつつあった。 平賀正義のいう「奥義」とは一体どんな技なのか? なるはこの危機をどう乗り越えるのか? 決着のときは刻一刻と迫っていた。 つづく |