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2004.7.17
連続小説
「GAMER 〜NAS芹沢物語〜」

(NAS芹沢@大阪PalmIII)


私の名は「なる」。
あ、いや、現在の名は「NAS芹沢」(なす・せりざわ)。
それは、私がゲーマーだった頃。
遠い昔のお話・・・。


第8回「あかねちゃんを取り戻せ! 親衛隊の大逆襲」


なるはその後「GAMER」に通うようになっていた。
自分にとって、非常に居心地のいい感じがするお店。
多くのゲーマー達が体を休めるためにこの店を訪れる理由が、なんとなくわかったような気がしていた。

あかね:きゃ〜なる〜!

カウンターの中にいるあかねは、なるを見るとエプロンも外さずにすぐ飛びついてくるのであった。

なる:うわっ、ちょ、ちょっと。
あかね:パートナーなんだから、当然よっ。
なる:それは君が勝手に言ってることじゃないか、や、やめて〜。

あかねはなるの背中にしがみつくと、ニコニコとうれしそうな顔をした。
なるは拒否しようとしたが、あかねは意外にも力が強かったのだ。
抵抗のしようがなかった。
言葉は悪いが、まるで獲物を狙う肉食動物があっという間に飛びついた、という感じである。

なる:もう・・・。
あかね:えへ。

あかねはちょっぴり舌を出して微笑んだ。

あかねの父:あかね、なる君とゲーセンに行っておいで。

カウンターで静かにコーヒーを準備していたあかねの父は、一旦落ち着いたあかねにそっと言うのだった。

あかね:お父さん。
あかねの父:たまには店のことはいいから、行っておいで。
あかね:お父さん。

なるは、一瞬あかねの父が自分に目で合図したのを見逃さなかった。
「あかねのことをよろしく」、なるにはそう読み取れたのだった。

なる:すみません、ちょっと行ってきます。
あかね:ごめんね、お父さん。ちょっと遊んでくるわね。

二人は「GAMER」を出た。
もうすぐ夏休み。
初夏の風はすでに暑く、二人は急いで涼しい梅田の地下に向かおうとした。

あかね:もう、すっかり夏ね。
なる:中学最初の夏だね。

その時・・・。

??:お前が「なる」だな?

二人は不意に男たちに囲まれたのである。

あかね:あ、ゴウ。

あかねに「ゴウ」と呼ばれたリーダー格のその男は、なるに言った。

ゴウ:オレの名はゴウ。三橋剛(みつはし・ごう)。

明らかにバリバリの校則違反な制服を着たその男は、同じような
制服に身を包んでいる6人の男を従えて、静かに語るのだった。
なるはビビるばかりである。
あかねは「ゴウ」を知っているのか?

あかね:あんた、何しに来たのよ。
ゴウ:何しにって、あかねさんをこんな軟弱な男から取り戻すために決まってるじゃないですか!

軟弱な男って・・・それって僕のことか?

なる:あの、この人・・・たち・・・は?

なるは恐る恐るあかねに聞いてみた。

ゴウ:俺が、泣く子も黙る「水咲あかね親衛隊」隊長の三橋剛であーるっ!

し、親衛隊!?
そんなのがあったのか?

ゴウ:我らゲーマー達のアイドルである、あかねさんをこの男は奪った!
ゴウの仲間達:そうだそうだー!

は?
これって、ものすごい勘違いをされているのでは?

あかね:ゴウ、あんた、何考えてんのよ。なるは・・・
ゴウ:問答無用、みんな、この軟弱な男からあかねさんを守れい!
ゴウの仲間達:あかねさんを取り戻せー!

ゴウとその仲間達はあかねに近づこうとした。

あかね:ちょ、ちょっと!

そのとき、なるは自然に体が前に出た。
圧倒的迫力で迫る男達を前に、あかねを守るようになるはあかねの前に立った。

あかね:なる!
なる:やめるんだ。

なるはあかねを守ろうとした。
しかし、ゴウはいとも簡単になるを払いのけた。
なるはゴウの一撃ではじき飛ばされて倒れ、身動きが出来なくなった。

あかね:なるっ!
ゴウ:あかねさんは俺達のものだー!
ゴウの仲間達:そうだそうだー!あかねちゃんは俺達のものだ〜!
ゴウの仲間達:こんな一撃でやられるような軟弱なやつにあかねちゃんを渡すなあ〜!

ゴウたちはあかねに迫った。
あかねは後ずさりしたが、ゴウたちはさらに近づいてくる。

あかね:ちょ、ちょっと!

あかね親衛隊を名乗る男達の暴走!
あかねに迫るゴウ。
しかし、なるは倒れたままだ。
あかねはどうなる?
そして、なるは?

つづく

2004.7.18
連続小説
「GAMER 〜NAS芹沢物語〜」

(NAS芹沢@大阪PalmIII)


私の名は「なる」。
あ、いや、現在の名は「NAS芹沢」(なす・せりざわ)。
それは、私がゲーマーだった頃。
遠い昔のお話・・・。


第9回「愛のケーキを召し上がれ」


あかね:ちょ、ちょっとやめなさいよ!

ゴウたちはあかねに飛びかかった。

あかね:もう、仕方ないわねえ。

バキッ、ドカッ、ボコッ。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

数分後、その場にはボコボコにやられたゴウと男達が積み重なるようにして倒れていた。
なんと、あかねが7人全員を倒したのである。
あかねは男たちが動けなくなったのを見届けると、なるの元へ駆け寄った。

あかね:なる、しっかりして!

なるは目を覚ました。

なる:何がどうなったの?え?何?

なるは状況がよくわからなかった。

あかね:なる、あたしを守ろうとしてくれたんだね。

なるは、あかねの父が目で合図したことを思い出しながら言った。

なる:だって、・・・パートナー・・・だもん。
あかね:なる・・・。

あかねは涙目になりながら、なるを抱きしめた。

翌日、なるはまたしても「GAMER」に行った。

なる:ええっ!これは一体・・・

店の中には、なんとカウンターで皿洗いをしているゴウ達がいた。
喫茶店のカウンターに大男達がエプロンを付けて立っている姿は、非常に似合わない。

あかね:ふふ、勘違いした罰よ。
ゴウ:あ、なる様、昨日は申し訳ございませんでした。あかねさんの大事な人がなる様だったとは知らず、アホなことをしてしまい・・・

その申し訳なさそうなゴウのエプロン姿を見て、なるとあかねは昨日の姿とのあまりの違いに大笑いした。
ゴウは恥ずかしそうに皿で顔を隠しながら、皿拭きをしていた。
なんだか、結構いい奴そうである。

女の子:あ〜この人がお姉ちゃんの新しい彼氏?

あまりにもインパクトのあるゴウの姿に気をとられて、まわりが見えていなかったなるは不意に女の子に指差された。
小学生?くらいの女の子だ。
黒くて長い髪の毛が美しい、目がまん丸なかわいい女の子が水色のTシャツと白い半ズボン姿でカウンターに座っていた。

あかね:まあ、そんなところね。

あかねは女の子に微笑みながらそう言った。
え、お姉ちゃんってもしかして・・・。

あかね:紹介してなかったわね、妹の愛(あい)よ。
愛:水咲愛です。こんにちは。

なるは驚いた。
妹がいるなんて全然聞いたことないぞ。

なる:こ、こんにちは。

なるはあかねが入れてくれたコーヒーを飲もうとした。
すると愛はなるに近寄って、言った。

愛:で、お姉ちゃんとは、どこまで進んでるの?

なるは思わずコーヒーを吹き出した。

なる:ど、どこまでって?
愛:ほら、キスまでとかいろいろあるじゃない。
あかね:こら、愛。調子に乗りすぎよっ。

愛は反省の色も見せずクスクス笑っている。
なるは赤面した。
見た目以上におませな子だ。
次に、愛はゴウに近づいて言った。

愛:どーして私の親衛隊は作ってくれないの?なんでお姉ちゃんばっかりなの?
ゴウ:い、いやそれはだな、その・・・。

なるを一撃で倒したゴウも、愛には全くかなわないようである。
いつもは静かな「GAMER」店内は、愛がいるだけでにぎやかであった。

なる:なんだか、いつもと雰囲気が違うね。
あかね:あの子はいつもこうなのよねえ。

あかねは困ったような顔をしていたが、でも嬉しそうだった。

愛:なるお兄ちゃん、私が作ったケーキ食べてよ!
なる:え?ケーキ?
愛:私が作ったケーキは世界一よ、食べて、ねえ、なるお兄ちゃん。
あかね:愛のケーキのおいしさは私も保証するわ。ぜひ食べてみて。

そこまで言われると、食べるしかない。
なるはイチゴのショートケーキをもらって、食べてみた。

なる:う、うまい!

なるは今までこんなにおいしいケーキを食べたことがなかった。

愛:でしょでしょ〜。毎日食べに来てね。なるお兄ちゃんのために作ってあげるわ。

愛はニコニコと満足そうな笑みを浮かべた。

愛:そうだ、お姉ちゃん。次の日曜日に、近くのゲーセンでペア大会があるらしいの、なるお兄ちゃんと出てみたらどう?
あかね:ペア大会?

あかねは愛が差し出したチラシを見た。

これからはゲームも二人で楽しむ時代!
次週のゲーム大会に男女ペアのチームを募集します。
二人の合計得点で順位を決定。
豪華な参加賞つき!

あかね:ふ〜ん、面白そうじゃない、なる、出るわよ。
なる:えっ、出るって何?
あかね:ペア大会なんだって。パートナーの実力を試すいいチャンスじゃない!

あかねは高笑いしたが、直後にゴウがつぶやいた。

ゴウ:二人の合計得点だから、あかねさんとじゃ勝てないかも・・・。

そこまで言ったが早いか、あかねはゴウをまたしても一撃で倒した。

あかね:うるさいわね、今から練習すればなんとかなるわよ。なる、練習するわよ、今日から毎日徹夜ね。
なる:ちょ、ちょっと待ってよ、練習って、ちょっと。
あかね:ゴウ、お店、あと頼むわね。
なる:いやだ〜助けて〜絶対無理だ〜。

なるはあかねにゲーセンへと引っ張られていった。

愛:がんばって、なるお兄ちゃん!

あかねとゲーム大会に出場することになったなる。
しかし、あかねのゲームの腕前は誰もが知るところ。
果たして、一週間であかねはゲームの腕が上達するのか?

つづく

2004.7.19
連続小説
「GAMER 〜NAS芹沢物語〜」

(NAS芹沢@大阪PalmIII)


私の名は「なる」。
あ、いや、現在の名は「NAS芹沢」(なす・せりざわ)。
それは、私がゲーマーだった頃。
遠い昔のお話・・・。

第10回「二人でラブラブ!? ペア大会開幕」


ゲーム大会に向け、なるとあかねはひたすら特訓の日々を送っていた。
で、状況はというと・・・

あかね:あ〜やっぱりだめ。できない。
なる:ほら、そこだ、そこで下、で、右、いまだ、ああ、だめだ。

そんなに簡単にゲームが上手くなれば、誰でも一流になれるはずだ。

なる:やっぱり、一週間じゃ無理だよ。普段も練習してないのに。

あかねは涙目で何かをなるに訴えていたが、こればかりは助けるわけにいかない。
ゲームを練習するということは、自分との闘いである。

なる:はい、もう一度最初から、やり直し。

なんだか家庭教師のようになってしまっている、なるであった。

そして、大会当日・・・・・・

あかね:なる、いよいよ本番ね。勝つわよ、絶対。
なる:その自信は一体どこから出てくるんだよ・・・。
あかね:ううん、なんだか、勝つ気がするの。
なる:なんで?
あかね:なんとなく。

なるは、根拠のないあかねの自信に余計不安になるのであった。

ゴウ:おお、たくさん人が来てるじゃねえか。
愛:なるお兄ちゃん、がんばってね、私、一生懸命応援するわ。
なる:ああ、ありがとう。

「GAMER」の常連は、ほとんど会場に来ていた。

司会:勝負は、最近発売されましたシューティングゲームの新製品で行います。

おおーっ、と会場に声が響き渡った。
新作でゲーム大会をすることは、当時としては珍しかった。

あかね:ねえ、聞いた、なる。新作らしいよ。じゃあ練習しても意味無かったんだ。

意味無いわけがない。
ゲームというのは同じようなジャンルのゲームをどのくらいこなしてきたか、という経験がものをいう。
この時点でなるはすっかり勝負をあきらめていた。

なる:楽しめばいいんだよ、ゲームが好きなんだから。

勝負も大事だが、ゲームが遊べるということ、それ自体が楽しみな人々が集まっていた。
そう、この雰囲気を味わうために。
男女ペアでゲームを遊ぶ人が少なかったこの時代だが、意外にも参加者は多かった。
15組のペアが登録していた。

司会:まず、女性、次に男性がプレイして、その総合得点で順位を決めます。

あかね:まずは私からね!

あかねは勢いよく台に向かうのだった。

ゴウ:あかねさーん、がんばってくださーい!
愛:お姉ちゃん、練習の成果を出せばいけるわー!
なる:大丈夫なのか、ほんとに。

あかねは、なるを見つめた。
なるも、あかねを見つめた。
その後、あかねは台に向かって座った。

司会:それではまず、女性からです、・・・スタート!

はじまった。
なるはいきなり驚いた。
みんなうまいのである。
自分の家の近くでは女の子はゲーセンにいないぞ、やっぱり梅田に集まる女の子ゲーマーはレベルが違うな、と感じていた。

あかねは一生懸命だった。
なるは、こんなにも必死になっているあかねの姿を初めて見た。
横顔に見とれてしまった。
そして思わず声を出した。

なる:あかね〜がんばれーーーっ!

そして女性のスコアアタックは終了した。
上位の人は30万点前後のスコアを叩き出している。

愛:すごーい、みんなうまいなあ。
ゴウ:あかねさんは、あかねさんはどうなった?

あかねは・・・・予想通りだった。
15人中15位、得点は2万点を少し超えたくらいだった。

なる:や、やっぱり・・・。
愛:でも、だいぶうまくなってたよ、前よりも。
あかね:ははは、やっぱこんなもんね。でも、精一杯やったわ!

あかねはスコアとは関係なく、爽やかな笑顔だった。
どんな競技でもそうだが、自分なりに一生懸命戦った後の笑顔は美しい。

なる:あかね・・・。
あかね:楽しかったわ。なる。
なる:よかった。すごくがんばってたね。
あかね:シューティングもたくさん練習したからね。それに、
なる:それに?
あかね:教えてくれた人が良かったんじゃないかしら?

あかねは満面の笑みだった。

あかね:なると一緒に大会に出られること自体が、うれしいの。
なる:そりゃあ、パートナーだからね。じゃ、行ってくるよ。

次はなるの番だ。

ゴウ:なる様ーー!がんばれー!
愛:なるお兄ちゃーーーんっ、二人分のスコアを出せば勝てるわーーー!
なる:そんな無茶な。
愛:あ、お父さん!

水色のエプロン姿のあかねと愛の父が、会場に到着したのだった。

あかね:お父さん!
あかねと愛の父:あかね、最後までなる君を応援するんだ、パートナーなんだろう。
あかね:うんっ、応援するわ。私のラブラブパワーで大逆転勝利よ!
愛:なるお兄ちゃん、優勝したらスペシャルなケーキ作るわよーがんばってー!

なるは台に座った。
とにかく楽しもう、と、なるは思った。

いよいよ大会はクライマックス!
なるは、どこまでスコアを伸ばすことができるのか?
あかねのラブラブパワーは勝利を呼ぶのか?

大勢の観衆が見つめる中、ついに男性のスコアアタックが開始される。

つづく

2004.7.27
連続小説
「GAMER 〜NAS芹沢物語〜」

(NAS芹沢@大阪PalmIII)


私の名は「なる」。
あ、いや、現在の名は「NAS芹沢」(なす・せりざわ)。
それは、私がゲーマーだった頃。
遠い昔のお話・・・。

第11回「目覚める力」


司会:では、男性のスコアアタックを開始します、・・・スタート!

ついに男性の回がはじまった。

あかね:なる〜私がついてるわよ〜!
ゴウ:なる様〜!
愛:なるお兄ちゃん、がんばれーーー!
なる:よっしゃあ!

なるは気合を入れて立ち向かった。

あかね:祈るわ。勝利を。
ゴウ:お、いい感じじゃない?
愛:だめ、あれじゃ他の人と同じペースだから、勝てないわ。

なるにも、それはわかっていた。
他のプレイヤーとほぼ同じペースで得点を稼ぎ、進んでいる。
このままでは合計点で勝てない、しかし、どうしようもない。

なる:くっ、どうすればいいんだ。

開始したときは楽しめばいい、と思っていたなるも、いざ勝負が始まると勝つ方法を模索していたのだった。
それがゲーマーの魂というものである。

愛:なるお兄ちゃーーん、あきらめちゃダメよーーーーっ!
ゴウ:なる様、ファイトーーーーーおおおっ!

必死の応援をするみんな。
しかし、あかねはなぜか一人だけ静かになっていた。
あかねはなるが遊ぶゲームの画面にじっと見入っていた。

あかね:あれは、もしかして・・・・・・・。

あかねは何かを見ていた。

愛:ん?どうしたの、お姉ちゃん?

すると、あかねは突然、叫んだ。

あかね:なるーーーーーーっ!左上のすき間を撃ってーーーーーっ!
なる:えっ?

いきなり、あかねの叫びを聞いてびっくりしたなるは、思わず言われたとおりにゲーム画面の左上部分の何もない所を撃った。
すると、なんとスペシャルなアイテムが出現したのである!

なる:こ、これは・・・・。

なるはアイテムを取ってみた。
なんと、自機が1機、増えたのである!

なる:どうしてわかったんだ、あかねーーーーっ?
あかね:わからないーーーー。でも、見てて何か変な「くぼみ」があるなっ、て思っただけーーー!

なるは叫び返したが、あかねは自分でもよくわからないという顔で叫び返すだけだった。
これは、いわゆる「女の勘」なのか?
まあ、偶然だろう。

しかし、このアイテムを取ったことで、なるに1つのアイデアが浮かんだ。

なる:仕方ない、やってみるか・・・・。

そのとき、またもやあかねはゲーム画面の何かをじっと見ていた。
そして、しばらくしてまた叫んだ。

あかね:なるーっ!赤い敵を全部来る順番通り狙ってーーーーっ!

またも、なるは言われたとおりにやってみた。
すると、なんと隠れボーナス点が加算されたのだった。

ゴウ:すごいや、あかねさん!
愛:どうしてそんなことがわかるの、お姉ちゃん?
あかね:よくわかんない。でも、見ているとなんとなくわかるの。

新作ゲームなので、そのような得点システムや隠しの1UP(自機が増えることをそう言う)があることを知っている者は会場にいなかった。
あかねは瞬時にしてそのゲームシステムを見切っていたのだった。

なる:これなら、いけるかもしれない。

なるは、ゲームの面の途中でやられた。

愛:あっ、なるお兄ちゃん、ピンチ!
あかねと愛の父:いや、違う。
ゴウ:あれは、わざとだ!
愛:わざと?・・・・・なるお兄ちゃん、まさか。

なるは、このゲームでは面の途中でやられることにより、面の序盤まで戻されることを知っていた。
最初に戻されることは、本来ゲームをクリアする上では不利になるはずだが、それによりもう一度赤い敵を撃つことができる。
つまり、得点の高い敵を何回も撃って点を稼ぐことを目的に、わざとやられたのだ!

あかね:そうか、その手があったのね!なるーーーーーがんばれーーーーっ!
愛:どういうこと?
ゴウ:いわゆる、「残機つぶし」だな。得点を競う大会で、すんなりゲームをクリアせずにわざとやられることで残機分得点を稼ぐって技だ。
愛:そんなことができるの?
ゴウ:もちろん、残機が無くなるということは失敗ができなくなるってことだ。危険を伴うぜ。でも、なる様はそれが出来るだけの腕を持ってるってことだ。
愛:なるお兄ちゃん!

なるは、あかねが発見した1UPアイテムのおかげでわざと何度もやられることで、他の人よりも得点を稼ぐことができた。
あかねも、なるに的確な判断でゲームのシステムについての情報を瞬時に伝えた。
効率よく得点が上がっていく。

愛:いけるかもしれない、いけるよ、なるお兄ちゃん!
あかね:なるーーーーーラストよーーーーがんばってーーーーっ!

そして、試合は終わった。
会場が一瞬して静寂に包まれる。

あかね:なる。
なる:すごいや、あかね。おかげで得点はどんどん上がっていったよ。
あかね:ううん、なるも素晴らしかったわ。全然ミスもしないし、久しぶりに見ていて気持ちいい感じだったわ。

二人はお互いをたたえあい、微笑んだ。

司会:結果を発表します。

いよいよ、結果発表!

愛:きゃードキドキする〜。
なる:やるだけのことはやった。それだけだ。
あかね:うん。

3位以下の発表があったが、なるとあかねは入っていなかった。
残りは二組だ。

司会:まず、ロバートと美奈のペア。75万2000点と32万100点、合計107万2100点です。

どよめきが起こった。
他の組より1桁多いスコアだった。

司会:最後に、NASとあかねのペア。113万6500点と2万1500点、合計115万8000点、優勝です!

会場は驚きの声に包まれた。
なるは、誰もが疑うような超高得点だった。

愛:やったーーーやったよ、なるお兄ちゃん、優勝だって!
ゴウ:すげえ!本当に一人で二人分のスコアを出しちまった!すげえ!
あかね:なる、やったわ!
なる:勝った・・・・のか?

なるは、ただ一人実感がわいていなかった。
優勝したといううれしさよりも、あかねの的確な状況判断と読み、そのおかげで勝てたということが何よりも驚きだったのだ。

なる:最高のパートナーだね。
あかね:当たり前よ。パートナーだもん。

あかねは今日一番の笑顔を見せた。

ゴウ:こりゃ今日はお祝いだぜ!
愛:スペシャルなケーキ、作らなくっちゃ。
なる:あ〜ケーキ食べたい。なんか、思いっきり頑張ったらおなかすいてきたよ。

そう言いながら、なるもこの日一番の最高の笑顔を見せた。

水咲あかねのゲーマーとしての力が、目覚めはじめようとしていた。

つづく


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